『差異と反復』第二章、第2段落、注釈2 ブログでの精読のスタイル

ブログ画面での精読を新たなスタイルで試みる。前回の精読部分すなわち第2段落の冒頭はほとんどそのままコピーして貼り付けておく(一部は変更する)。今回は、第2段落のおよそ半分を改訳し、文章一つひとつに番号をつけて考察する。

【文庫版198~200頁】
時間の第一の総合—――生ける現在

① そのような変化〔=反復を観照する精神のなかにその反復が導き入れる差異つまり変化〕は、どうなっているのだろうか。ヒュームの説明によれば、互いに独立した同一のあるいは似ている諸事例は、想像力のなかで融合する。想像力は、ここではひとつの縮約能力として、言わば〔古典的な写真機の〕感光版として定義される。想像力は、新たなものが現れてきても、以前のものを保持している。


② 想像力は、等質な諸事例、諸要素、諸振動、諸瞬間を縮約し、それらを融合して、或る種の重みをもった内的な質的印象をつくる。Aが現れると、すでに縮約されているすべてのABの質的印象に応じた力で、われわれはBを予期するのである。それは、断じて記憶ではなく、知性の働きでもない、つまり縮約は反省ではないということだ。
〔以上、前回の精読部分〕

〔以下、今回の精読部分〕
➂厳密に言うなら、縮約は時間の総合を成している。④瞬間の継起は時間をつくらない、それどころか、時間をこわしてしまう。⑤言い換えるなら、瞬間の継起は、時間が生まれようとしてはつねに流産してしまう点を示しているだけである。⑥時間は、瞬間の反復を対象とする根源的総合のなかでしか構成されない。⑦この根源的総合は、互いに独立した継起的な諸瞬間の一方を他方のなかで縮約してゆく。⑧このようにして、根源的総合は、生きられる〔体験される〕現在を、つまり生ける現在を構成する。⑨そして、時間が広がるのは、まさにその現在のなかにおいてである。⑩過去も未来も、まさしく生ける現在に属している。⑪すなわち、過去は、先行する諸瞬間がそうした縮約のなかで把持されているかぎりにおいて、生ける現在に属し、未来は、予期がその同じ縮約のなかでは先取りであるがゆえに、生ける現在に属している。⑫過去と未来は、現在とされた瞬間から区別される〔二つの〕瞬間を意味しているのではなく、諸瞬間を縮約しているかぎりでの生ける現在の〔二つの〕次元を意味している。⑭現在は、過去から未来へ行くために、自分の外に出る必要はない。⑮したがって生ける現在は、その現在が時間のなかで構成する過去から未来へ進む・・・【第2段落途中】

 【考察:私は前回の記事で次のように言った;『差異と反復』第二章における三つの「時間の総合」という名称にはハイデガーの『カントと形而上学の問題』からの影響が見られる。ハイデガーは、カント『純粋理性批判』第一版におけるいわゆる三段の総合、すなわち「直観における覚知の総合」、「構想力における再生の総合」、「概念における再認の総合」に、それぞれ現在性、過去性、未来性をあてがっている。

もちろん、三段の総合は時間にもとづいて成立することを、カント自身が注意している。

『カントと形而上学の問題』のドイツ語原書は、一九二九年に出版され、一九五三年に仏訳されている。ドゥルーズは『差異と反復』第四章でこの仏訳に言及し、かなりの量の文章を引用している(原注17参照)。けれども、『カントと形而上学の問題』におけるカントの三段の総合のハイデガー的解釈には触れていない。しかしドゥルーズはこのハイデガーの書を熟読しているはずだ。

では、『差異と反復』第二章の「三つの時間」の総合は、カントの「三段の総合」のハイデガー的解釈にもとづいて理解されるのだろうか。いや、そんなことはない。

また、ドゥルーズが、以上の点に関して、カントやハイデガーをどれほど正確に理解できているのかと問うのも無意味である。

まず、ドゥルーズの「時間の総合」で何が言われているのかを追究することから始めなければならない。

「時間の総合」とは、「時間を総合する」ということだろうか。では、ここで言われている「時間」とは何か、「総合」とは何か。

上の精読部分でさえ、話が込み入っている。時間は構成されるものであり、現在も構成されるものである。そして、現在のなかで時間は広がる。

われわれは慎重に考えていかなければならない。
(考察続く)
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プロフィール

財津理

Author:財津理
思想研究家
法政大学教授
連絡先:za10@hosei.ac.jp

主な翻訳(共訳を含む)
ドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社)
ドゥルーズ『経験論と主体性』(河出書房新社)
ドゥルーズ/ガタリ『哲学と何か』(河出書房新社)
ドゥルーズ『シネマ1*運動イメージ』(法政大学出版局)
モニク・ダヴィド=メナール『ドゥルーズと精神分析』(河出書房新社)
メルキオール『現代フランス思想とは何か』(河出書房新社)
メルキオール『フーコー 全体像と批判』(河出書房新社)
オニール『言語・身体・社会』(新曜社)

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