『差異と反復』第2章、第2段落、注釈1 精読は面白い

ここでもやはり、第2段落を細かく区切って精読し、問いを立てていく。やや詳しい注釈をつけ、多少の議論もするが、詳しくは、いずれ拙論「『差異と反復』の解析と再構成の試み1」の続編で論じる予定である。


【文庫版198頁~】
時間の第一の総合—――生ける現在

【注、ここから三つの「時間の総合」が論じられていくのだが、「時間の総合」という名称にはハイデガーの『カントと形而上学の問題』第32節以下からの影響が見られる。ハイデガーは、カントの構想力(想像力)に「現在・過去・未来」の時間的性格を見いだし、さらにカント『純粋理性批判』第一版におけるいわゆる三段の総合、すなわち「直観における覚知の総合」、「構想力における再生の総合」、「概念における再認の総合」に、それぞれ現在性、過去性、未来性をあてがっている。カントの三つの「総合」が「時間の総合」と呼ばれることがあるのは、おそらくこのようなハイデガーの解釈の影響によってであろう。
また、後ほど指摘するが、ドゥルーズの「受動的総合」という名称は、フッサールの『デカルト的省察』第38節「能動的発生と受動的発生」における「受動的総合」という名称を借用したものと推測できる。さらにまた、後で指摘するが、ドゥルーズは、ベルクソンの『思想と動くもの』やフッサールの『内的時間意識の現象学』に出てくる語を使っている。断定的な物言いになるが、ドゥルーズは、ハイデガーやフッサールより、ベルクソンをはるかに深く読み込んでいると言えよう。これについても、他の機会に論じるほかはない。】

① そのような変化は、どうなっているのだろうか。ヒュームの説明によれば、互いに独立した同一のあるいは似ている諸事例は、想像力のなかで融合する。想像力は、ここではひとつの縮約能力として、言わば〔古典的な写真機の〕感光版として定義される。想像力は、新たなものが現れてきても、以前のものを保持している。

【注、「縮約 contraction コントラクシオン」について。ドゥルーズはすでに、『ベルクソンにおける差異の概念』のなかで、ベルクソンにおける有名な物質と持続のそれぞれの定義をとりあげている。すなわち、前者は「弛緩 relâchement ルラ-シュマン」、後者は「縮約contraction コントラクシオン」である。「contraction コントラクシオン」は、ベルクソンにおいては、「収縮」と訳されることが多い。だが、このベルクソンの諸定義は、それほどわかりやすいものではない。『物質と記憶』の該当する文章をすべて精読する必要がある。しかし、ベルクソン精読は他の機会に譲ろう。それはともかく、『差異と反復』における「contraction コントラクシオン」という語の二つの意味については、『差異と反復』文庫版上207頁を参照していただきたい。この箇所にもとづいて、「contraction コントラクシオン」を「縮約」と訳した。】

② 想像力は、等質の諸事例を、諸要素を、諸振動を、諸瞬間を縮約し、それらを融合して、或る種の重みをもった内的な質的印象をつくる。Aが現れると、すでに縮約されているすべてのABの質的印象に応じた力で、われわれはBを予期するのである。それは、とりわけ記憶ではなく、知性の働きでもない。つまり縮約は反省ではないということだ。

【注、ここから第3段落にかけて、フッサールの『内的時間意識の現象学』の時間論と、ベルクソンの『思想と動くもの』所収「形而上学入門」の時間論を思わせる議論が繰り広げられる。ドゥルーズがフッサールやベルクソンに言わば乗って論じているのは、確かだ。問題は、ドゥルーズの時間論の独自性がどこにあるかだ。これについても、注釈から独立したかたちで論じなければならない。ともかく、精読を進めよう。】
(続く)
関連記事
検索フォーム
プロフィール

財津理

Author:財津理
思想研究家
法政大学教授
連絡先:za10@hosei.ac.jp

主な翻訳(共訳を含む)
ドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社)
ドゥルーズ『経験論と主体性』(河出書房新社)
ドゥルーズ/ガタリ『哲学と何か』(河出書房新社)
ドゥルーズ『シネマ1*運動イメージ』(法政大学出版局)
モニク・ダヴィド=メナール『ドゥルーズと精神分析』(河出書房新社)
メルキオール『現代フランス思想とは何か』(河出書房新社)
メルキオール『フーコー 全体像と批判』(河出書房新社)
オニール『言語・身体・社会』(新曜社)

リンク
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示
月別アーカイブ
FC2カウンター