ドゥルーズ哲学の実践としての「ヴィジュアル・ウエルネス」研究

授業以外の業務に追われ、私に与えられた時間が細切れ状態になり、落ち着いて思考したり書いたりできる連続的な時間が取れなくなっている。ブログ執筆にもなかなか取り掛かれない。読者には申し訳ないことだ。

とはいうものの、授業外の業務のひとつに、法政大学経済学部学会研究会で講演していただける講師の先生方をお招きするというものがあって、ようやく日時を確定することができた。誰でも無料で聴講することができる。
http://www.hoseikeizaigakubugakkai.com/research/

11月16日14:00~16:00
講師:水巻 中正 先生 (国際医療福祉大学大学院教授)
テーマ:アベノミクス下の医療と国際化

12月7日14:00~16:00
講師:佃 堅輔 先生 (法政大学名誉教授 美術評論家)
テーマ:国を追われた画家たち

場所はともに、市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階C会議室。


以上とはまったく別の話だが、経済学部で私が担当しているゼミの新たな企画が実現されつつあり、これにも時間をかけている。経済学部のゼミでありながら私のゼミは、「ヴジュアル文化論」と銘打ち、学生たちはこれまで芸術系の個人研究に専念してきた。しかし今年度の後期から、「ヴィジュアル・ウエルネス研究」として、地域社会に密着した共同研究に方向転換した。

「ヴィジュアル・ウエルネス」とは私の造語である。「ヴィジュアル」で芸術一般を指す。「ウエルネス」は、心身の積極的な健康維持を意味する。「ヴィジュアル・ウエルネス」とは、普通の市民が小さなコミュニティ(サークル活動)において、鑑賞する芸術・芸能というよりも自分が行う芸術・芸能によって、心身の健康を維持するということだ。

高齢化社会を迎えたいま、体力の衰えた高齢者でも芸術・芸能活動は可能である。「ヴィジュアル・ウエルネス」は、健全な高齢化社会を実現するひとつの方途でもある。

ゼミでの「ヴィジュアル・ウエルネス」研究では、法政大学多摩校舎近辺の三つの市、すなわち八王子市、町田市、相模原市において、市の諸施設を利用している市民サークルの芸術・芸能活動を詳しく調査する。これを通じて、地域社会での「ヴィジュアル・ウエルネス」のさらなる活性化を、市民と行政に呼びかけたいと考えている。11月2日に、多摩校舎で「多摩地域交流センター」の開設記念行事が行われるのでこれに参加し、ゼミの研究活動の一端を紹介する予定だ。
http://www.hosei.ac.jp/NEWS/newsrelease/131004_02.html


ところで、哲学者ドゥルーズが論じている芸術家は、そのほとんどが或る種の狂気に囚われた者たちである。たとえば、画家ベーコン、作家ネルヴァル、メルヴィル・・・。しかし、彼らをマイナーな芸術家だとは、いまではとうてい言えないだろう。大芸術家たちである・・・。

かつて、渋谷にあったカルチャー・スクールのようなところで、私は音楽家たちとともに、ドゥルーズ/ガタリの『千のプラトー』における音楽論の講演をしたことがある。ドゥルーズに詳しくない音楽家たちとは毎回、講演の前にブレーンストーミングの仕方で打ち合わせをした。『千のプラトー』に出てくる音楽作品を拾い上げていくうちに、彼らは苦笑し始めた。どうしたのかと尋ねると、期待していたのにマイナーな作品は出てきませんねと答えた。そう、『千のプラトー』で論じられている音楽作品は、どのような現代音楽入門書でも必ず扱われている作品ばかりである。今ではすでにメジャー扱いされている周知のものばかりだ・・・。

私は、或る市民サークルで、宝生流の仕舞と謡を山田元就先生のもとで稽古している。頭のなかではまだ能の現代化をあきらめてはいないが、600年以上の伝統に支えられた能の重みを体で感じている。

ドゥルーズの差異哲学におけるクリエーションの理論を、思いきって、私のような普通の平凡な人間たちの芸術・芸能活動の理論に作り変えたいと思っている。金を稼ぐためのものでもなければ、有名になるためのものでもない芸術・芸能活動。社会の経済活動に大きく貢献することはないささやかな芸術・芸能活動。

私も人も、やがて死ぬ。「ヴィジュアル・ウエルネス」とは、芸術・芸能活動においてこの一瞬一瞬を見る生であり、死に向かって生を見る生である。

11月2日の「多摩地域交流センター」開設記念行事が過ぎれば、ブログ執筆に当てる時間が増えるだろう。
関連記事
検索フォーム
プロフィール

財津理

Author:財津理
思想研究家
法政大学教授
連絡先:za10@hosei.ac.jp

主な翻訳(共訳を含む)
ドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社)
ドゥルーズ『経験論と主体性』(河出書房新社)
ドゥルーズ/ガタリ『哲学と何か』(河出書房新社)
ドゥルーズ『シネマ1*運動イメージ』(法政大学出版局)
モニク・ダヴィド=メナール『ドゥルーズと精神分析』(河出書房新社)
メルキオール『現代フランス思想とは何か』(河出書房新社)
メルキオール『フーコー 全体像と批判』(河出書房新社)
オニール『言語・身体・社会』(新曜社)

リンク
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

RSSリンクの表示
月別アーカイブ
FC2カウンター