新・ラカンSLV翻訳と注釈1

「SLV 翻訳と注釈」の記事は、は2012/06/11で途絶えていたが、本日から再開する。フランス滞在中は、ジャック=アラン・ミレール(Jacques‐Alain Miller)にお会いする機会がなかったが、今後もコンタクトを取る予定はない。

これからは、ラカンのテクストのみを分析するという立場を守る。ラカンのSLVの翻訳と注釈では、まず暫定的な訳文をつくり、同時に、重要と思われる言葉や文章を『エクリ』全文にわたって探し求めていく。そして、翻訳と参照箇所とを交差させていこう。それぞそれの『セミネール』のテクストも検索可能になれば、そこでも関連箇所の探索をおこなうつもりだ。

どのような結果が出るのか見通せているわけではないし、とてつもなく時間がかかる作業になるだろうが、「ラカンによるラカン」を制作することが私の野心である。ただし、体力に応じてゆっくりと進んでいかざるをえない。それがひとからどう評価されようと、もはやどうでもいいことだ。

使用するテクストや邦訳等については、2010/12/18の記事で説明してあるので、ここでは繰り返さない。SLVの冒頭の「エピグラフ」と第1段落の最初の二つの原文の翻訳は、すでにこのブログで発表してある。今日は、最初の部分は重複するけれども、第2段落までの翻訳を発表する。これは、法政大学紀要『経済志林』Vol.78,No.14、2011で公表した訳文の一部をやや変更したものである。

どの程度まで意訳するかという問題がある。直訳の方が訳語の統一をとりやすいのだが、読みにくくなる。意訳に過ぎれば、ポリフォニーによる言葉どうしの連関が失われる。そのへんの兼ね合いは、試行錯誤的に訳しながら考えていくが、このブログではやや意訳に振って、訳語の統一の厳密さはそれほど求めないようにしよう。

たとえば、第1段落で使われている《prendre》という動詞と《prise》という名詞に、同じ訳語をあてなかった。

ちなみに、英訳と独訳は、かなりの意訳である。

なお、訳文中の太字は、訳者財津による強調である。今後『エクリ』全文のなかで、太字の語句に関連する箇所を探すことになる。
また、〔〕内の言葉は、やはり訳者による補いである。
一つの段落のなかに文章が複数ある場合には、各文章に番号をつける。

                   ∴
〔エピグラフ〕
 そんで、それ=エスが、おいらに運よくできるなら、
 そんで、それ=エスが、うまく運ぶなら、
 それ=エスが、思考というもんだ。
 〔ゲーテ『ファウスト』、「魔女の厨」における「獣たち」の台詞、行数2458~2460、ただし、「魔女の厨」という表題の訳は森林太郎(鴎外)にしたがう。〕


〔第1段落〕
①反復自動症(反復強迫)は、わたしたちがシニフィアンの連鎖執拗な内的存立と呼んだものを原理としていること、このことをわたしたちは、これまでの研究によって認めるようになった。
②わたしたちは、この概念そのもの〔執拗な内的存立〕を、外への-存立(すなわち、中心から外れた場所)と相関する概念として取り出したのであって、フロイトの発見を真剣に受け止めるべきである以上、外への-存立にこそ、無意識の主体〔あるいは無意識という主体か?〕を位置づけなければならない。
象徴界〔象徴的なもの〕についての以上のような理解が、想像界〔想像的なもの〕のどのようなもろもろの迂回路を通って、人体のもっとも内奥のものにまで行使されるようになるのかということは、周知のように、精神分析によって創始された経験のなかで把握することができる。

〔第2段落〕
象徴的連鎖〔シニフィアンの連鎖〕に関係づけられ、それによって結合され方向づけられる場合を除けば、そのような想像的諸影響は、私たちの経験の本質的なところは表わさないのであって、反対に私たちの経験の不整合なところしか明らかにしないのである。
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プロフィール

財津理

Author:財津理
思想研究家
法政大学教授
連絡先:za10@hosei.ac.jp

主な翻訳(共訳を含む)
ドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社)
ドゥルーズ『経験論と主体性』(河出書房新社)
ドゥルーズ/ガタリ『哲学と何か』(河出書房新社)
ドゥルーズ『シネマ1*運動イメージ』(法政大学出版局)
モニク・ダヴィド=メナール『ドゥルーズと精神分析』(河出書房新社)
メルキオール『現代フランス思想とは何か』(河出書房新社)
メルキオール『フーコー 全体像と批判』(河出書房新社)
オニール『言語・身体・社会』(新曜社)

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